AIへ詳しく指示したのに、できあがったものが少しずれている。
修正を頼むたびに別の場所が変わり、結局は人がやり直す。
この失敗は、指示文が短いから起きるとは限りません。
依頼する人とAIの間にある「分からないこと」を、作業前に見つけられていない場合があります。
Fable時代のAI活用法として紹介された考え方を、非エンジニアにも使える形へ置き換えて解説します。
AIへの指示と実際の仕事には隙間がある
元記事では、「地図は現地ではない」という考え方が使われています。
AIへの指示や仕様書が「地図」、実際のファイル、利用者、社内ルール、完成条件が「現地」です。
地図を丁寧に書いても、現地のすべてを一枚に載せることはできません。
AIは、指示に書かれていない部分へぶつかると、過去に学んだ一般的な方法で穴を埋めます。
その方法が今回の会社や現場に合うとは限りません。
任せる仕事が大きくなるほど、この小さなずれが積み重なります。
「地図と現地」の考え方については、地図と土地の関係も参考になります。
Fableのような高性能AIで指示が大切になる理由
Fableは、2026年7月時点でAnthropicが提供しているAIモデルです。
元記事は、Fableのように複雑な仕事を進められるAIほど、モデルの能力不足より、人が伝えていない条件が作業の制約になりやすいと説明しています。
ただし、対策は長い指示文を最初から書くことではありません。
細かく決めすぎると、途中で別の方法へ変えるべき場面でも、AIが古い指示に従い続けることがあります。
反対に、「いい感じに作って」とだけ頼むと、AIは一般的な正解を選びます。
必要なのは、分からない部分を種類ごとに分け、安く確認できる順に減らすことです。
仕事を止める「4つの分からないこと」
元記事の4分類を、日常の言葉へ置き換えると次のようになります。
1.分かっていて、言葉にできる
目的、期限、予算、対象者、完成条件など、依頼する人が説明できる情報です。
たとえば、「7月末までに採用ページを更新する」「スマートフォンで読みやすくする」は、この種類に入ります。
AIへ最初に渡す情報ですが、これだけで仕事の全体像が決まるわけではありません。
2.分からないと自覚している
答えは持っていないものの、確認が必要だと気づいている項目です。
「応募フォームに何を入力してもらうか」「写真を新しく撮るか」といった迷いが当てはまります。
AIへ一度に質問を出させると負担が増えるため、結論を変えそうな質問から一問ずつ聞かせます。
3.見れば判断できるが、まだ言葉にしていない
好みや使いやすさの基準を、自分の中には持っている状態です。
完成前は説明できなくても、二つの見本を比べれば「こちらの方が信頼感がある」と判断できます。
この種類は、文章で説明し続けるより、簡単な見本を複数作る方が早く見つかります。
4.存在に気づいていない
調査するまで、確認項目として思い浮かばない制約や落とし穴です。
古いページからのリンク、公開後の更新担当、使えない画像の権利、入力データの保存先などが該当します。
依頼する人も知らないため、「必要な情報があれば聞いて」だけでは見つからない場合があります。
AIに既存資料や現在の仕組みを調べさせ、見落とし候補と確認方法を先に出させます。
作業前・作業中・作業後で確認すること
4種類を理解しても、一度の指示で全部を解消することはできません。
確認する時期を三つに分けると、手戻りを減らしやすくなります。
作業前:完成品より先に、盲点と見本を出す
最初に、現在の資料、過去の成果物、社内ルール、変更してはいけない範囲をAIへ見せます。
次に、依頼者が見落としている可能性がある条件を探させます。
見れば判断できる内容は、完成品ではなく、方向の違う簡単な見本で比べます。
計画を作る場合は、画面、入力項目、保存方法、公開範囲など、後から変えると手間が大きい項目を先に置きます。
そのまま使える依頼文
この作業を始める前に、私が見落としている条件や制約を調べてください。現在の資料、既存ファイル、運用ルールを確認し、見落とし候補と確認方法を一覧にしてください。
回答によって計画が変わる質問は、一度に一問ずつ聞いてください。
作業中:計画から変えた判断を残す
作業を始めると、事前調査では分からなかった事情が見つかります。
AIへ、変更した判断、その理由、確認した証拠、残っている疑問を短く記録させます。
この記録があれば、「いつの間にか最初の話と違う」という状態を減らせます。
ただし、削除、外部送信、公開、個人情報、費用が発生する操作は、AIの判断だけで続けさせません。
安全に戻せない操作は、人が確認してから進めます。
そのまま使える依頼文
作業中に計画から変更した点を、変更内容、変更理由、確認したこと、残るリスクに分けて記録してください。公開、送信、削除、課金の前では止まり、確認を求めてください。
作業後:成果物だけでなく、確認結果を受け取る
完成品だけを受け取ると、AIがどこまで確認したのか分かりません。
変更点、確認した方法、解消できなかった疑問、公開後に見る場所を説明させます。
依頼者が内容を理解できているか確かめたい場合は、変更内容について三問ほど質問させる方法もあります。
答えられない項目は、説明か確認が不足している可能性があります。
そのまま使える依頼文
最後に、変更点、変更した理由、実施した確認、残っているリスクを初心者向けに説明してください。私が理解できたか確かめるため、重要な点を三問出してください。
薬局の採用ページ更新に当てはめる
たとえば、AIへ「薬局の採用ページを若い人向けに直して」と頼む場面を考えます。
この一文だけでは、「若い人」「直す」「良い採用ページ」の意味が決まっていません。
作業前に4種類へ分けると、次のように整理できます。
| 種類 | 採用ページで確認すること |
|---|---|
| 分かっていて伝えられる | 募集職種、勤務地、勤務時間、公開期限 |
| 分からないと分かっている | 応募前に伝える情報、写真の準備、応募方法 |
| 見れば判断できる | 親しみやすさ、写真の雰囲気、文章の固さ |
| 存在に気づいていない | 古い募集要項との不一致、スマートフォン表示、公開後の更新担当 |
AIには、現在の採用ページと確定済みの募集要項を先に確認させます。
そのうえで文章と画面の見本を複数作らせ、採用担当者が選びます。
完成後は、記載内容、応募導線、スマートフォン表示、公開ページを人が確認します。
この流れなら、「もっと詳しく指示を書く」だけでは見つからない問題も扱えます。
医療・介護・薬局で変えてはいけない線引き
4種類の分からないことを整理しても、医療上の判断や個人情報の扱いまでAIへ任せることはできません。
医療・介護・薬局では、少なくとも次の線引きを先に決めます。
- 患者情報、利用者情報、服薬情報、相談記録を、利用条件や組織内規程を確認せずに外部AIへ入力しない
- 診断、治療、服薬、診療報酬、介護報酬の最終判断をAIへ任せない
- 制度や医薬品に関する説明は、行政機関、添付文書、ガイドラインなどの一次情報へ戻る
- 公開文章は専門職と校正担当者が確認する
- 外部送信、公開、削除の権限を分ける
AIに任せやすいのは、公開情報の整理、構成案、見本、確認項目、下書きです。
人は、入力してよい情報、専門判断、公開可否、最終責任を持ちます。
最初の一歩は、完成を頼む前の確認
次にAIへ少し大きな仕事を頼むときは、いきなり完成品を求めないでください。
現在の資料を見せ、見落とし候補を出させ、重要な質問を一問ずつ受けます。
好みを説明しにくい場合は、安い見本を二つか三つ作らせます。
作業後は、変更点と確認結果を受け取ります。
この確認を先に行うと、指示文を長くするだけでは減らせなかった手戻りを見つけやすくなります。
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モデルごとの仕事の向き不向きは、GPT-5.6 SolとClaude Fable 5を仕事で使い分ける方法で解説しています。
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